「近々両用メガネって何?遠近両用メガネと何が違うの?」
遠近両用メガネや老眼鏡の名前は知っていても、「近々両用メガネ」はあまり聞いたことがないという人も多いかもしれません。
近々両用メガネは「奥行きのある老眼鏡」であり、特にパソコン作業の多い方に向いています。
今回は近々両用メガネの使い道やメリットを解説します。
目次
近々両用メガネとは
近々両用メガネは文字通り、手元や手の届く範囲を見るための眼鏡です。原則として座った状態で使うもので、かけたまま出歩くことはしません。
近々両用レンズの構造
近々両用レンズの構造は次の図のようになっています。
近々両用のレンズは1枚のレンズの中に手前と奥の二つの焦点の中心があります。
レンズの大部分が手前に焦点が合い、レンズの上の方に行くほど段階的に奥の度数に変わっていくのです。
「手前と奥」がそれぞれどのくらいの距離を指すのかは、次の2点で変わります。
①近手前は老眼鏡と同じように、一番見たいものが見える距離です。一般的には30cmほどですが、20㎝でスマートフォンが見たい人など、人によって距離が異なります。
②近奥は「近手前から見て、約60㎝~100㎝遠く」を指します。60㎝~100cmと幅があるのは、近々両用レンズにはいくつかの種類があり、選択するレンズによって奥の距離が変わるためです。「30cmから手を伸ばした辺りまで」をイメージするといいでしょう。
近々両用メガネのメリット
近々両用メガネは「手前の〇〇を見ながら奥の△△も見える」という「ながら使い」ができるのが大きなメリットです。
二つの焦点(近手前と近奥)の中間は度数がグラデーションのように変化しており、若い頃のように無意識な視線の移動で、自然に対象物を捉えることができるのです。
手前の資料を見ながら奥のパソコンも使える、手元のお米の粒も見えるしテーブルの奥のおかずも見える、ピアノの譜面を見ながら鍵盤も見える、といった具合に、奥行きのある手元の範囲がはっきり見えるようになります。
近くのものであれば老眼鏡の交換やかけ外し、身を乗り出して距離を調整するなどの必要もないため、ストレスなく仕事や趣味に打ち込めます。
近々両用メガネのデメリット
近々両用レンズは、レンズの構造上、レンズの鼻側と耳側の一部にぼやけや歪みが発生します。そのため、顔を振ったり横目でものを見たりすると、クラクラする違和感やピントが合いにくい部分があることに気づくと思います。
視線だけ左右に動かして見るとぼやけを感じやすいので、「手元の書類を横に置いたまま正面のパソコンを見る」ような時は、顔をごと横に動かして視線はなるべくまっすぐに向ける意識をするといいでしょう。
ただし、この違和感や歪みは遠近両用メガネほど強くはありません。遠近両用メガネに慣れずに脱落した方でも「近々両用メガネなら大丈夫」というケースはよく見られます。
老眼鏡や遠近両用メガネとの違い
近々両用メガネは、用途の似ている老眼鏡や名前の似ている遠近両用メガネとは、一線を画した違いを持っています。
老眼鏡との違い
老眼鏡は近くの一点にしか焦点が合いませんが、近々両用メガネは手前から少し奥まで「深さのある見え方」をします。
上図のように、老眼鏡はレンズのすべての範囲が「近くの一点」に焦点が合った状態です。つまり、30cmの距離ではっきりものが見えるような老眼鏡だと、それより近くても遠くても焦点が合わずにぼやけてしまうのです。
例えば読書とパソコンを両方したい場合、それぞれ見る距離が違うので、読書用の老眼鏡をかけたままではパソコンは見えません。顔を近づけたり老眼鏡をかけ替えたりして、焦点が合う距離の調整をする必要があります。
近々両用メガネは焦点の中心が二つあるので、メガネをかけ替える必要もなく、距離の違う二つ以上のものをはっきりと見られるのです。
遠近両用メガネとの違い
遠近両用メガネは、メガネをかけ替えることなく生活できるのが特徴ですが、その一方で長時間の手元の作業には向いていません。遠近両用メガネは遠方から中間、近方まで広い範囲をカバーする設計で、運転はもちろん家事や読書まで、日常生活のすべては遠近両用メガネ一本で事足ります。
ただし、遠近両用メガネのメインはあくまで「遠方」であり、中間から近方は「おまけ」的な構造になっているのです。デスクワークや近くを見ることが多い方は、近々両用メガネの方が向いています。
各レンズメーカーは、なるべく近用部を広く設計するような遠近両用レンズを開発していますが、それでも近々両用レンズほど近用部が広くなることはありません。
近々両用メガネが向いている人
近々両用メガネは以下のような人に向いています。
- 遠近両用メガネだと近くが見えづらい
- デスクワークをしている
- パソコンを見る時にパソコン用メガネをかけている
- パソコンを見る時に老眼鏡を外している
- テーブルの手前から奥まで見たい
- 趣味で近くを見ることが多い
- 老眼鏡を替える時期なので測り直したい
「長時間読書をするためだけのメガネ」であれば老眼鏡で十分ですが、それ以外の何かをしてみたいと思ったら、近々両用メガネはかなり役立ちます。
近々両用メガネの作り方
近々両用メガネを作るには、お客様ご自身の協力が必要です。
メガネ作製の流れは以下を参考にして下さい。
- 何を見たいのか、何を見る時に困っているのかはっきりさせておく
- 見たいものの距離(書類、パソコン、裁縫など)を測っておく
- メガネ店または眼科に行き「近々両用メガネを試したい」と伝える
- 検査スタッフにより視力検査、メガネの装用テストをする
- フレームとレンズを選ぶ
- 注文する
- 仕上がりまで一週間程度待つ(納期は店舗による)
特に大切なのは1と2です。「何を見たいか、その距離はどのくらいか」は近々両用レンズの度数を決定するために不可欠です。
ご自宅で対象物までの距離を測っておくと、検査時にスムーズな度数決定ができます。
なお、近々両用メガネのテストレンズを置いていない施設では装用テストができないので、近々両用メガネは作製できません。入店したら最初に近々両用メガネを試したい旨を伝えておきましょう。
近々両用メガネにおすすめのフレーム
近々両用メガネは遠近両用メガネほどレンズの縦幅にこだわる必要はありません。しかし、レンズの縦幅が狭いほど手前の近用部分がカットされてしまうので、狭すぎるよりはある程度の広さがあるフレームがおすすめです。
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ツーポイントと呼ばれるフチなしフレームは、視界にレンズの枠が入り込まない分、視野を広く感じられます。外見上メガネを目立たせたくない方に向いています。
ただし、近々両用メガネでは必然的にかけ外しが多くなるため、レンズを止めるネジのゆるみや、ツルの折りたたみ時にレンズに負荷がかからないようにするなど、少し注意が必要です。
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上部だけフチのあるハーフリムと呼ばれるフレームは、下方に枠がないため、視線が下向きになる近々両用メガネに向いています。
ツーポイントフレームよりも丈夫であり、気軽に取り扱えるのもメリットです。こちらもかけ外しが多いことからネジのゆるみは生じやすくなるので、ツルの折りたたみ時に締まりが弱いと感じたら早めにメガネ店へ持っていきましょう。
近々両用メガネはきちんと測定して作ろう
近々両用メガネは読書やデスクワークに大変便利です。遠近両用メガネと近々両用メガネの2本があれば、遠くから手前のほとんどの範囲をカバーできます。
近々両用メガネの作製には、きちんとレンズのメカニズムを理解したメガネ店スタッフによる検査が必要です。
レンズの加工やフィッティングにも技術を要するので、格安店ではなくしっかりとしたケアをしてもらえるメガネ店を選択しましょう。
【記事監修】アイジャパン株式会社 事業本部コミュニケーションデザイン部 木村幸生
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