【2019/3/25 追記あり】
家族としては、80歳を過ぎた親に補聴器を装着して欲しいけれど、金額もそれなりにするし、実際に購入した方やその家族に聞いてみても、思ったように使いこなせないうちに本人が嫌がってしまい、結果として「宝の持ち腐れ」になってしまわないだろうか…
この記事では、本人よりも先に家族として「そろそろ補聴器が必要かも知れない」と感じたり、「いまある補聴器にはちょっと不満で、実は高齢者でも使いやすい補聴器があるのではないか?」と考えているご家族さまの悩みに対して、
- 国内産と海外製など、メーカーによって聴こえ方の違いはあるのか?
- 高齢者が抱えやすい悩みにはどんなものがあるのか?
- 一人暮らしや施設にいるため家族がサポートできなくても補聴器は使えるのか?
- 補聴器を選ぶ前に知っておきたいことにはどんなことがあるのか?
について、専門スタッフや、実際に補聴器の調整や購入の依頼を何度も経験されている高齢者施設の介護職員の方から話を聞いてみました。
目次
1 メーカーによって聴こえ方の違いはあるのか?
メーカーによって、聴こえの方の違いはありますが、むしろ使う側と補聴器(聴こえ方)の相性というべきかもしれません。通勤電車に乗ると、老若男女問わず、特徴や価格の異なるイヤフォンやヘッドフォンをして聴こえを楽しむように、補聴器にも聴こえ方に特徴があります。
国内製と海外製のどちらが良いか?になると、聴こえ方よりは使い方に違いがあるようです。進化し続ける補聴器ですが、国内製は、【音の聴き取り】よりも【機器の使い勝手】を軸に開発をしているようです。
例えば、電池が左右のどっちの向きでもOK、なんていう仕様で作るのは、いかにも日本人らしい発想ですよね。使い勝手を優先して考えると、リオネットやパナソニックはおすすめです。
それにしても、なぜ補聴器は海外製品が多く流通しているのでしょうか?
1-1 海外製の補聴器が多い理由とは
理由は言語の問題にあるようです。
日本語と比べ、英語をはじめ、海外の言葉のほうが、母音と子音の組み合わせのパターン多いことが挙げられます。音のバリエーションが多い、ということは、聴き取りも複雑になる、このあたりが海外製品の多い原因ではないかと考えられます。
例えば、日本語の母音は、あ・い・う・え・おの5つですが、英語はなんと30近い母音があります。このように、しっかり聴き取れないと、日本語以上に会話が成り立たない、という背景があるようです。
また、北欧のメーカーが多いのは福祉先進国だから、という理由もあるでしょう。
1-2 ここ2〜3年で聴こえる音の特徴が無くなっている!?
ここ2~3年前までは、メーカーごとの聴こえる音の特徴が異なっていたので、経験の多いプロなら「この方の、この聴力で、この弁別能力ならこのメーカーが合いそうだ」という判断ができたのです。
ところが、この1~2年の各メーカーの新商品で顕著になっているのが、聴こえる音の特徴がなくなってきた、ということ。つまり、どのメーカーも似たり寄ったりになっているのです。
そうなると、聴いてみて、良さそうか、そうでないか、反応を見るしかない。これは、自動車が、ひと昔前に比べると、メーカーごとの特徴が薄れて、どこも平均的に安全で快適な乗り心地であるのと良く似ている気がします。
1-3 補聴器の選び方が変わってきた!?
また、海外製の補聴器は「音を楽しむ」という観点を重要に開発しているようで、スターキー社が最初に開発した※ミュージックエンハンス機能は代表的です。※音楽専用メモリーを搭載し、会話音の処理はそのままに、音楽・BGMを別処理する機能
本来、言葉を聴き取るだけだったものが、屋外でコンサートを楽しんだり、自宅でステレオを楽しむことができるなど、われわれの趣味嗜好に細かく対応するようになりました。
2 高齢者さまに多い悩みとは?
介護職員の方に話を聞いてみると、高齢者さまと関わることで多い悩みが「聞こえないこと」なのだそうです。聞こえなくなってくると、人と関わることが億劫になって、引きこもりの原因や、認知症の原因となってしまったり。
そのために、補聴器の専門スタッフの方と連携しながら、その人に合った補聴器選びのお手伝いをするわけですが、実際に嫌がられることが多くあったそうです。
よく聞こえるようになるのになぜだろうと不思議に思っていましたが、嫌がられる理由に次のことが分かってきたのです。
- 自分自身で付けにくい
- 装着してもよく聞こえない
- 付け外しの際にピーピー音がしてうるさい
確かに「自分自身で付けにくく」「装着してもよく聞こえない」のであれば、補聴器を嫌がるのは当然ですね。
3 家族のサポートが無くても使いこなせるのでしょうか?
高齢者さまは、介護施設でスタッフに見守られながら生活していたり、ご自宅で介護サービスを受けながら生活していたり、中には一人暮らしの高齢者さまもいます。
補聴器のことで気になるのは「自分で使えているのか」「電池交換はできているか」「しっかりと聞こえているか」ということではないでしょうか。
結論から言えば、家族のサポートがなくても補聴器を使うことはできます。家族のサポートがない状態で高齢者本人が補聴器を使っていけるようにするにはどうすればいいか、介護職員の視点でお伝えします。
3-1 ご自宅で
ご自宅の高齢者さまには、介護サービスを受けている人だけではなく、自力で生活されている人もいます。介護サービスを受けているという高齢者さまであれば、担当のケアマネジャーや介護スタッフに補聴器のことを伝えておくといいでしょう。
簡単な対応であれば、福祉のスタッフが対応してくれることも多いです。特にケアマネジャーに伝えておけば、必要に応じて補聴器販売店の専門スタッフともやり取りをしてくれます。また補聴器販売店では、訪問してサービスしてくれるところも多いので、うまく活用するといいでしょう。
高齢者さまほど、どれだけ手先を動かせるか、についてはかなり個人差があります。
自分で電池交換できるか、装用・管理できるかになります。例えば、あまり小さいと目立ちにくい反面、意外と失くしやすく、管理が大変だと感じる高齢者さまも少なくありません。
両耳のカラーバリエーションを変えて、左右分かり易くするのもアリ!?
これは、補聴器本体に限らず、電池そのものにも言えそうですね。補聴器は外すのは簡単ですが、装用(はめる)するのは以外と難しいものです。
実際に高齢者のお客さまの中には、上手くはめられるようになるのに1週間続けて店に通われたケースもあるほど。
3-2 介護施設内などで
介護施設内には、介護スタッフをはじめ、看護師・相談員・ケアマネジャー・リハビリスタッフなど多くの関係者が高齢者さまをサポートしています。ただし、補聴器に関してはそれほど詳しくないスタッフがいるのも事実です。
しかし、ご本人の生活をサポートしている一環として、補聴器の使用状況も気にしておいてもらうことは可能です。気になるようでしたら、担当の介護スタッフや相談員、ケアマネジャーに伝えておけばいいでしょう。
また補聴器販売店の専門スタッフは、介護施設であっても訪問して、調整や電池交換、使用状況の確認などしてくれるところもあります。必要に応じて、介護スタッフからも聞き取りしてくれ、対応してもらえますから安心です。どこまでサービスしてもらえるのかどうか、確認しておくと良いでしょう。
3-3 介護職員が語るエピソード
この記事を執筆するにあたり、介護職員の方にこんな2つの質問をしてみました。
【質問①】この高齢者さまに、補聴器必要かな?と思ったことはありますか?
例えば、老人ホームに入居されている高齢者さまの場合、積極的にコミュニケーションを好まれない方もいて、周りの高齢者さまとコミュニケーションを楽しみたい、テレビを楽しみたいなど目的があればいいのですが、すべての方がそれを望まれている訳ではない、ということがあるそうです。
また、補聴器を付けると「聞こえすぎる」ということがありますが、私たちの耳は、必要なものだけ聞こえる仕組みになっています。例えば、ざわついた場所で話をしている場合には、相手の話声だけに集中して聴けるようになっているのです。
しかし補聴器ではすべての音を均等に拾ってしまいますので、聞こえすぎて「うるさい」とおっしゃる方がおられます。話をするために補聴器を付けても、周りにあるテレビの音で消されてしまうなんてこともあるので、このあたりは利用環境を含め、家族がしっかり理解したうえで必要かどうか、検討する必要がありそうです。
【質問②】介護職員の目線で、良い補聴器店スタッフとそうでないスタッフの見分け方を実話を交えて教えて下さい。
高齢者さまが補聴器を購入される場合、機械のことはまったく理解されていないことがほとんどです。そのため介護職員がサポートをすることになるのですが、補聴器の専門家ではありません。
また介護職員は、当然ですが本業(介護業務)で多忙であり、補聴器のことだけで多くの時間を取れない状況にあります。
その点を踏まえてサポートをしてくださる店員さんは、かなりありがたく感じるんだとか。高齢者さまの特性をよく知って対応される店員さんであれば、サポートをお任せすることもできますので安心です。
反対に介護職員にすべて押しつけてくるような店員さんもいるそうで、売ってしまえばそれでいいのかと考えてしまうこともありますから、そのような補聴器屋さんでの購入をおすすめすることはできないでしょう。
4 補聴器を選ぶその前に…
4-1 聴こえ方の好みは、見え方の好みより何倍も細かいのです
お金や貴重品を自分の後ろ側に落とした時にどうやって気がつくのか?といえば、それは【耳だけ】です。五感のうち、目や、匂い、触覚では確認することができませんよね。
アナログスピーカーやアンプなど、音楽機材にびっくりするくらいお金をかける方もあなたの身近にひとりやふたりはいるように、聴こえ方の好みは、見え方の何倍も細かいと言われています。
だからこそ、何度も測定をしたり、細かい要望に耳を傾けなければ、耳になじまない。専門家に好みをよく理解してもらわないと、補聴器をする本人に大いにストレスがかかっていることを理解する必要があります。
4-2 補聴器って大きくってラクダ色の…って思っていませんか?
人によっては、補聴器を「大きなラクダ色の…」だと思っていたり、従来の耳掛け式しかご存じない方なら、補聴器=メガネをするのにジャマになるもの、という固定観念をお持ちの方もいます。
また、補聴器は昔に比べて小さく、目立たなくなったと分かっていても、実物を手にとってにて初めて、「こんなに小さいなんて…」と感想をおっしゃったり、本当に補聴器が目立たないことがイメージできることも多いです。
4-3どこの補聴器屋さんで買っても同じだと思っていませんか?
4-3-1 耳鼻科さんに出入りしている補聴器屋さんから買う場合
耳鼻科に出入りをしている補聴器屋さんから購入しようとするのが多いのはなぜでしょうか。確かに、お医者さまからの情報伝達はどこよりも早いですし、信頼関係もありますから安心感はあるでしょう。
ただ、気をつけておきたいのは、「アフターサービス(サポート)」です。具体的には、月に1〜2度程度しか訪問していない補聴器屋さんだとしたら、アフターサービスの観点ではちょっと問題があると言えます。
ちょっと聞きたいことがあっても、1〜2週間待たなきゃいけないのは、サポートが受けられないのと同じだと言えます。「待てないから近くの補聴器店に行こう」と考えるくらいなら、どこで購入するか、ということもよく考えておく必要があるでしょう。
4-3-2 眼鏡店で補聴器を買う場合
また、家族が付き添って補聴器選びをする場合だと、営業時間や曜日もポイントになります。ゆっくり時間をかけて選ぶことを考えると、週末や祝祭日・もしくは平日夜遅くに対応してもらいたいと思うのは当然ですよね。
買い物のついでに補聴器屋さんに行ってみたら「本日定休日」とあったら、目も当てられませんよね。その点、眼鏡店なら土日祝日ということはまずあり得ませんし、平日でも夜7〜8時まで空いている場合も多いですから安心ですね。
また、介護職員さんなど高齢者のサポートする際には、以下のようなポイントに気をつけているそうです。
最低限、どのくらいの時間がかかるもの?具体的になにを測定するのか?
実際に話を聞いてみると、理想は1時間30分~2時間、測定するだけで30分かかりますので、最低限60分は時間をいただきたいというのがホンネのようです。どうしても、時間が無いお客様には何回かに分けて訪問していただくこともあるようですし、「これが合うだろう」と予測した商品を提示する場合もあります。
では、具体的に60分間でどんなことをするのでしょうか?
・現状の把握
日常会話や外出時、もしくは趣味でハーモニカを吹くなど、実際に、どういう時に聴こえにくく困っているのか?また、それは、どういう聴こえ具合なのか?
・聴力測定
時間がない方には気導聴力を中心に、周波数帯域をすべて測定できるのがベストですが、一番肝心なオクターブ(125ヘルツが一番低い音でそこから順に、250、500、1,000、2,000、4,000、8,000ヘルツとありますが、両端の125、8,000ヘルツを除いてしまうこともあります)
・調整して、実際に聴いてもらう
パソコン操作など、慣れない補聴器スタッフだと30分でこの工程をこなすのは難しいようですから、忙しい方ほど、認定補聴器技能者の方に測定してもらいたいですよね。
販売店に訪問しやすいかどうか
事前に販売店に連絡し、「段差はないか」「歩行器や車いすでも店内に入ることができるのか」「営業時間」「通いやすい場所か」などを確認してから、販売店に付き添いをするそうです。
高齢者さまは、このようなことから嫌がられる方が多いようです。また、負担を考えて、調整などで訪問してもらえるかどうか、など購入してからのアフターフォローも確認するそうです。
認定補聴器技能者が在籍しているお店かどうか
「認定補聴器技能者」は補聴器のプロとして認定する資格です。きちんと技術者が在籍されている販売店であれば、測定なども専門的で情報もしっかりと丁寧に説明してもらうための目安になるでしょう。
実際に補聴器スタッフの水落さんに、実際の一般的な接客の流れを聞いたところ、
①聴こえの好みでメーカーを幾つかに絞りつつ 機種を2種類に絞る
- メーカーを絞る
- 耳穴にするか耳かけなのか?
- 耳穴式にするならどの機種にするのか?
②各メーカーの多様な形状の中から、はめるのが困難でないかを調べる
という流れで対応しているそうです。
幅広い補聴器から最適なものを選んでもらえるかどうか
補聴器は安価で簡易なものから、高価で多機能なものまで様々です。
サポートしていたご高齢者の中には、かなり難聴が進んでいる方だけでなく、手の不自由な人で補聴器が付けにくいという人もおられるので、そのような観点でも、技術者がおられる販売店では、メーカーごとの特性なども把握しているので、最適なものを選ぶことができるでしょう。
4-3-3 補聴器に訪問サービスがあるのをご存知でしょうか?
その他、ご高齢者の場合ですと、本人が一人で外出することが困難だったり、身体の自由が利かないことも多いです。そのような場合は補聴器訪問サービスをご利用されてみてはいかがでしょうか。
眼鏡店でも、補聴器の訪問サービス専門部隊を配置している場合も多いです。※補聴器の訪問サービスを行っていない眼鏡店もあります。
補聴器の購入や調整が訪問でできるということは以外と知らない方が多いようです。外出がおっくうになっている高齢者さまのためや付き添いされる人のご負担を考えれば、積極的に活用すべきででしょう。
ちなみに、アイメガネの場合、出張費などを請求することは無く、お店で購入するのと同じ条件で購入ができます。
実際に利用者は、「店員さんに来てもらえるなんて思わなかった」「お店に行かないと補聴器は手に入らないと思っていた」という声をいただくこともあるようです。
例えば補聴器は電池切れを起こすようなこともあります。でもどの電池を交換したらよいのか、どのように交換したらよいのか、なかなか高齢者には理解することができません。このような原因で、補聴器を嫌がられるという人も多いのです。
例えば、電池切れのような場合でも、販売店の専門スタッフが来てくれるかどうか、最初に確認してみると良いでしょう。
4-4 補聴器は買ったらすぐに使いものになると思っていませんか?
補聴器は精密機器であるため、汚れや湿気に影響することで知られていますが、気にしなければいけないのは、それだけではありません。
それは、補聴器が耳に馴染むためには時間ががかかる、ということです。専門家の方は、「自分の耳の代わりになるまでに3,000時間かかる」とおっしゃる方もいるくらいです。
例えば、補聴器を1日10時間、毎日装着したとして、10時間✕365日=3,650時間
ちょっと気が遠くなりそうですが、定期的なサポートを受けなければ3,000時間もの間トラブルなく使いこなせませんよね。
具体的には「外出先ではしっくり来ていても、ご自宅に戻るとちょっとうるさく感じる」「いっぺんに色々な人から話しかけられると聴き分けることが難しいくなる」ことを理解していただいたうえで使っていただきます。
耳に馴染むまでの3,000時間にたどり着くために、補聴器屋さんは何回くらいサポートをしてくれるのでしょうか?実際に認定補聴器技能士である補聴器販売員に、実際の購入後の平均的なサポート回数がどうなっているのか聞いてみました。
- 商品お渡しから
- 2週間後(ご来店・ご訪問)
- さらに1ケ月後(ご来店・ご訪問)
- さらに2ケ月後(ご来店・ご訪問)
- さらに2ケ月後(ご来店・ご訪問)
- 6ケ月以降も3ケ月おきに継続してメンテンナス(ご来店・ご訪問)
一般的には、補聴器のお渡しから3〜4回のメンテナンス(サポート)をうけてはじめて、耳に馴染んでくるのだそうです。
もちろん、耳に馴染んでからも、3ケ月間隔で継続してメンテナンスを受けることを推奨しています。補聴器を購入しても、難聴が進んでしまうようなこともあり、また聞こえなくなってしまうこともあります。
きちんと自身で使えているかについても、気になるところです。そのような不安が起らないよう専門スタッフによって、定期的に使用状況を確認したほうが良いでしょう。
例えば、2週間の貸出をする場合、推奨ルールとして、1週間後に調整に来ていただく時に、2台目の、別の補聴器と交換します。※特別なご予約の無い限り、2つの機種を貸出をして聴き比べていただきます。
別の補聴器をつけることで、Aを聴いてBがどうだったのか?という比較対象ができ、購入の後押しになります。
3つのステップで簡単ですので、貸出の時用の取扱い説明書(PDF)のダウンロードして、家族の方だけでもチェックしてみてはいかがでしょうか。
4-5 公的支援が受けられるのはどんな場合でしょうか
補聴器は高齢者さまのコミュニケーションにとってとても大事なものになります。自分に合った補聴器を装着することで、生活に潤いが出て豊かになることは間違いありません。
しかしそれは理解できているとしても、いざ購入するとなるとやはり価格の事が気になる方が多くいらっしゃいます。補聴器によっては数十万円になってしまうことも珍しくありませんから、購入するには身構えてしまうことも理解できます。
補聴器には、公的支援を受けて購入できる制度があります。うまく活用すればリーズナブルに購入することができますから、どのような手続きが必要なのか、誰が公的支援を受けることができるのか、お伝えしていきます
公的介護保険と混同される方が多いですが、まったく別のものになりますから注意しておきましょう。
4-5-1 身体障害者福祉法について
補聴器の公的支援を受けるには、身体障害者福祉法によって身体障害者手帳を取得し、障害者総合支援法から公的支援を受けることになります。具体的にどのような法律なのか説明しましょう。
身体障害者福祉法とは、聴覚障害だけではなく、身体機能や臓器などに政令で定める障害がある場合に、必要に応じて保護するための法律です。高齢者さまで聴力の程度によっては、身体障害者手帳の取得が可能となっています。聴力レベルが70db以上であれば認定されることになります。聴覚障害者として認定されている人は全国で40万人程度おられます。身体障害者福祉法から判定基準を見ていきましょう。
2級:両耳の聴力レベルがそれぞれ100dB以上のもの(両耳全ろう)
3級:両耳の聴力レベルが90dB以上のもの(耳介に接しなければ大声語を理解し得ないもの)
4級:1.両耳の聴力レベルが80dB以上のもの(耳介に接しなければ話声語を理解し得ないもの)
2.両耳による普通話声の最良の語音明瞭度が50%以下のもの
6級:1.両耳の聴力レベルが70dB以上のもの(40cm以上の距離で発声された会話語を理解し得ないもの)
2.一側耳の聴力レベルが90dB以上、他側耳の聴力レベルが50dB以上のもの
4~6級の認定では、大声での話が何とか聞こえる程度でありますが、2~3級の認定ではかなり大きな音が何とか感じる程度になります。
聞こえにくくなる、もしくは難聴になる原因は先天的なものや高齢化などによって起こる後天的なものもあります。これらの聴覚障害者を「ろうあ者」「難聴者」「中途失聴者」と分類されていますが、明確に分類することは難しくなっています。これらの原因は、身体障害者手帳の認定には関係ありません。
4-5-2 支給までの流れについて
補聴器の公的資金の支給については、障害者総合支援法に基づく「補装具支給制度」によって受けることができます。ここで障害者総合支援法について説明しましょう。
障害者総合支援法とは、「身体障害者」「知的障害者」「精神障害者」「児童」「その他の障害者」が自立した生活のために、障害と障害のスキマなくサービスを受けることができるように定められた法律です。つまり先ほど説明した身体障害者福祉法は、この障害者総合支援法に含まれている法律と考えてもいいでしょう。
補装具支給制度を受けるためには、身体障害者手帳を取得しなければなりません。お住まいの市区町村にある福祉事務所などで、身体障害者手帳交付申請を行います。かかりつけの病院等で、聴覚に関する診断書・意見書を書いてもらい、提出する必要があります。
身体障害者手帳を取得すれば、福祉事務所などで「補聴器給付申請」を行うことになります。「補聴器給付申請書」をもらいましょう。さらに指定の病院で補聴器購入にかかる診断書・意見書が必要になります。「補聴器給付申請書」「診断書・意見書」ができあがれば、補聴器屋さんに持っていくと見積書を発行してもらえます。
「補聴器給付申請書」「診断書・意見書」「見積書」「身体障害者手帳」を持参し、福祉事務所などで補聴器給付申請を行います。補聴器給付の判定があり、許可が下りれば「補装具支給券」を受け取ることができます。この「補装具支給券」を持参し、補聴器屋さんに持っていけば、自己負担額で補聴器を購入することができます。自己負担額は、原則1割負担となります。ただし、所得によっては例外もあります。
この一連の流れについては一般的なものであるため、各市町村の福祉事務所等に確認してから申請を行うようにしてください。
4-5-3公的支援を受けて購入した補聴器はメンテナンスを受けられるのでしょうか?
公的支援を受けて購入した補聴器であっても、通常購入とどうようにメンテナンスを受けることが可能です。補聴器を付け始めてなじむまでには、長い時間が必要となります。その間に不具合があると、付けることが嫌になってしまう高齢者さまもおられます。
補聴器屋さんの専門スタッフが訪問するなどして対応し、装着具合、聞こえ具合などをチェックしていきます。また電池交換などにも対応できますので、確認してみるといいでしょう。
5 まとめ
補聴器は機能面はもちろん、見た目も日々進化しているので、選ぶ際には実際に手にとって確かめてみましょう。「思っていたよりずっと小さい」と、家族が心配するよりずっと前向きな気持ちになってくれるかも知れません。
耳鼻科に出入りしている補聴器専門店で買うのが一般的と思われがちですが、本人はもちろん家族にとって、営業時間などアフターサービスの受けやすさという観点で考えた時には、近くの眼鏡店などで購入するほうが長い目で見ると安心できるかも知れません。
補聴器は買っておわりではなく、サポートを受けながらじっくり(3,000時間)時間をかけて、自分の耳に馴染ませるものだと理解しましょう。何年か先に本当に補聴器が必要になったときのために、まずは、「補聴器をつけたらどうなるのか?」を1度だけ経験しておいてみてはいかがでしょうか。
【記事監修】アイジャパン株式会社 ビジョン&ヒアリングケア事業部 木村幸生
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