メガネのことやメガネ店のことを、少しでも身近に感じていただきたい。悩みを気軽にご相談いただいて、1人でも多くの方に快適な毎日を送っていただきたい。
そんな想いでさまざまな企画をお届けしていますが、今回はメガネではなく補聴器のお話です。アイメガネ各店では、補聴器も取り扱っています。
「補聴器」と聞いて、どのようなイメージをお持ちですか?つけているのが目立ちそうで恥ずかしい?なんだか煩わしそう?音がうるさそう?
実は、多くの人が抱いている補聴器のイメージって、一昔前のものだったり、誤解を含んでいたりするようなのです…。
今回は、補聴器の正しい知識や最新事情をお伝えするために、補聴器のプロによる座談会の様子をお届けいたします。
<参加者>
【写真左から】
・渡邊 修さん
(ビジョン&ヒアリング・ケア事業部 営業部 訪問サービス課)
・水落 明日香さん
(アイメガネ本店)
・宮良 秀さん
(ビジョン&ヒアリング・ケア事業部 営業部 訪問サービス課)
このうち訪問サービス課の2名が「認定補聴器技能者」という資格を持ち
アイメガネ本店の水落さんも補聴器販売歴10年(資格取得中)を超える補聴器のプロです。
<認定補聴器技能者とは?>
さらに、資格は5年ごとの更新制となっており、更新には講習会の受講が必要。常に学び続けなければ資格を保持し続けられないのです。
聴力は生活の質を大きく左右するものです。
3名のプロのお話を通して、ご自身や大切なご家族が快適に暮らせるお手伝いができたら幸いです。
目次
「補聴器=音を大きくする機械」ではない!?
―みなさんはメガネ店の中で補聴器も扱っていらっしゃるわけですが、補聴器ならではの難しさってありますか?
水落:
補聴器は、お客様の聞こえに1回で合わせるのが難しいんです。
視力の場合は、例えば「あなたの視力は今0.1しかないので、この度数のメガネをかけていただくと0.7になるから、運転できるようになりますよ」といった共通認識が比較的簡単です。
でも聴力の場合は、どんな音が聞き取りにくいのか、人によって大きく異なりますし、環境によっても聞こえ方は異なります。ご自宅、外出先、デイサービス…静かな場所もあれば、騒がしい場所もありますよね。こういった違いを店舗である程度想像しながら、お客様に合う聞こえ方を調整するんですが、そのすり合わせが1回では難しいです。
―たしかに音の大きな場所もあれば小さな場所もありますし、聞こえてくる音はさまざまで一定ではないですよね。
宮良:
「聞こえる」という状態には2種類あります。「音は聞こえるけれど、何を言っているのかわからない」という場合と、「音も聞こえていて、言っている内容も理解できる」という場合です。日本人には前者が多くて、「呼ばれているのはわかるんだけど、しゃべっている内容がわからない」といったことをよくご相談されます。
補聴器というのは、足りない部分を補ってあげる機械ですので、前者の状態から後者の状態になればいいわけです。「わからないところをわかるように補う」のが補聴器の仕事であって、必ずしも音量を上げる機械ではないんですよね。
―「補聴器=音を大きくする機械」というイメージをなんとなく持っていました…!
渡邊:
「補聴器をつけると今までよりも音が大きく聞こえる」という認識を持つ方が多いのですが、それは「補聴器」と「集音器」を混同されているのだと思います。
「集音器」というのは、医療目的ではなく、高度管理医療機器でもありません。すべての音を集めて一様に大きくする機械です。例えば、バードウォッチングをする人が、「鳥の声がもっと大きく聞こえたら鳥を見つけやすい」というときに使うものなんですよ。
しかし、補聴器は高度管理医療機器です。ちゃんとお客様の聞こえに合わせて調整できる人がいなければ販売できないものなんです。
水落:
集音器と補聴器の違いを、私はよく「既製の老眼鏡」と「視力に合わせて作った遠近両用メガネ」に例えます。
100円均一などで売っているような既製の老眼鏡は、必要なときだけ短時間かける分には便利かもしれません。でも、それを1日中かけていられるでしょうか?とても耐えられるものではないはずです。でも、オーダーメイドの遠近両用メガネなら、遠くも近くも自分の視力に合わせて見えるようにしますから、長時間かけていられますよね。
集音器と補聴器の違いも同じです。補聴器は、苦手な音を補って1日トータルでサポートする機械です。
補聴器が頼もしい「自分の耳」になるまで
―なるほど…よく理解できました。環境やお客様の聞こえ方に合わせて細かく調整するとなると、たしかに1回では合わせるのが大変そうです。そういう場合、どうするのでしょうか?
宮良:
補聴器は「魔法の機械」ではないので、ある程度時間をかけて自分のものにしていきますよ、とお客様には最初にお話をしています。ご自身の聴力や環境に合った聞こえ具合になるように、複数回の調整が必要ですし、自分の耳の代わりになるまでには半年程度かかることが多いです。
最初は、音が入ってくること自体、煩わしいと感じてしまう方がどうしてもいらっしゃいます。聞こえが悪いということは、それだけ「静か」な世界にいらしたということですから。音に慣れていただくだけでも時間がかかるんですよね。
―もともと時間のかかる機械なのですね。でも、時間をかけて丁寧に調整して慣れていけば、「自分の耳」になってくれると。
渡邊:
補聴器ってそういうものなんです。ですから、最初は本当に必要なときだけでもいいから、1日1時間でも2時間でも毎日必ず使ってみてください、とお伝えします。それで、もしこれまでより少しでも聞こえやすかったら、少しずつ使う時間を延ばしていただく。
先ほどの話にもありましたが、たとえ音が大きくならなくても、今まで聞こえなかったことが聞こえるようになっていれば、効果は出ているということです。使い続けなければ音にも慣れませんし、調整のしようもありませんから、まずは慣れるまで使ってくださいとお願いしていますね。
水落:
私の場合は、「メンテナンスプラン」というのを納品時にお作りしています。最初の3ヵ月間は、2週間とか1ヵ月ごとにご来店いただいて、3~6ヵ月経つと軌道に乗ってきますよ、というお話をしています。安心してご来店・ご相談いただけるように、私の出勤日も定期的にご案内するようにしています。
ご本人様やご家族様の状況によっては、頻繁に来店するのが難しい方もいらっしゃいますが、だからこそ訪問課というのがあるわけですね。
一緒に補聴器を育ててくれるパートナー選び
―補聴器は時間をかけて「育てる」ものなのですね。そうなると、店員さんは伴走してくれるパートナーのような存在でしょうか。補聴器を買う場所も重要になりそうですね。
宮良:
補聴器は「耳鼻科でお願いすれば安心」と思っている方が多いんですが、注意が必要なのが、病院の診療時間や曜日です。
補聴器担当者が月1回しか来ていないとか、常駐スタッフがいない病院もあります。そうすると、困ったことが起きても、すぐにサポートが受けられない。結局、それっきり補聴器を使わなくなってしまう人もいるようです。
また、病院は土日が休みのところも多いですよね。それだと、例えば「家族が運転してくれないと出かけられない」という場合に不便です。我々のようなメガネ店なら土日も営業していますし、ご相談いただきやすいのではないかと思います。
―たしかに病院よりもメガネ屋さんのほうが営業時間が長くて行きやすいですね。
渡邊:
とはいえ、補聴器の調子が悪いと感じても、「お店に連れていってもらうのは家族に悪いから」と遠慮して、思うように聞こえないまま使ってしまったり、外してしまったりする方もいらっしゃいます。
私と宮良は訪問サービスの担当ですが、訪問サービスがあることをご存じない方もいらっしゃいますし、お金を取られるのではないかと懸念される方もいらっしゃいます。会社によりますが、アイメガネの場合は、訪問料は頂いていません。
―高齢のお客様も多いでしょうから、訪問サービスはとても助かりますね!とはいえ、補聴器の相談自体、敷居が高そうな気もしてしまいます。何か気をつけることはありますか?
水落:
可能であればご家族の方と一緒にご相談いただきたいと思っています。聞こえが難しくなったことに最初に気づくのは、多くの場合ご本人様ではなくご家族様ですし、ご本人様が自覚される頃では遅いです。軽いうちに補聴器を使い始めたほうが、補う部分が少ない分、短時間で慣れます。また、ご家族も大きな声で話さなくて済むので、楽になりますよね。
ですから、できるだけ軽い段階でお越しいただきたい。補聴器は貸し出しを行っていますので、「百聞は一見にしかず」ではないですが、実際に試してみていただけたらと思います。必ずしも購入しなくても構いません。試した経験があるだけでも違うと思いますから。
編集後記
補聴器のプロによる座談会、いかがでしたでしょうか。
筆者自身も、聴力の落ちた身内に補聴器を勧めて拒否された経験があるのですが、補聴器はメガネなどに比べて抵抗を感じる人が多いように思います。
しかし、丁寧に調整を重ねていけば、これほど心強い味方はないはずです。よく聞こえるようになれば、周りの人とのコミュニケーションが活発になります。そして、コミュニケーションは人を若々しく元気に保つものではないかと思うのです。
「自分の耳」を一緒に作り上げてくれるパートナーとして、認定補聴器技能者を含むお三方は頼もしいなと感じました。実際に補聴器の相談をご希望の方は、ぜひお近くの店舗まで!
※今回座談会に参加してくださった水落さんのインタビュー記事はこちら。
【追伸:取材中のエピソード】
写真撮影をしていたら、そこに通りかかったのはなんと…澤田泰行社長!
一緒に写ってくださいました。
先日取材させていただいたとはいえ、なんてフレンドリーな社長なのでしょうか…ありがとうございました!
【記事監修】アイジャパン株式会社 ビジョン&ヒアリングケア事業部 木村幸生
【協力店舗】アイメガネ本店
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